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2005.04.20

遡及立法の危険性

今は、飲酒運転の常習者が事故を起した場合には業務上過失致死傷罪よりも量刑が重い危険運転致死傷罪が適用されるが、この罪は01年に制定されたもの。刑法改正の一つのきっかけとなったのは、99年東名高速道路における飲酒運転による事故で2名の幼児が亡くなったことだった。

取材場所に行く途中か帰る途中かのテレビクルーが事故直後の模様を撮影しており、ワイドショーでよく取り上げられていたから、覚えている人も多いだろう。乗用車の後部座席の子供を助けようとする母親と、その行為をあざ笑うかのように乗用車から噴出す火。足元がおぼつかない加害者。

事故後、ご両親は加害者のトラック運転手が常習的に飲酒運転をしていたこと、雇い主の運送会社も見て見ぬふりだったことに激怒し、名前も顔も公開の上でマスコミに対応されていた。資料が見つからないので記憶で書くが、この運転手は「業務上過失致死」としては最も重い5年の実刑判決が出たはず。検察官も判事も社会的影響を考慮したものだろうという解説がなされていた。判決後、ご両親が記者会見されて「現在の刑法で最も重い量刑を科していただけたことには感謝しているが、私たちはあくまで殺人罪の適用を望む」みたいなことをおっしゃられていた。その後、国会内でも話題となり、「危険運転致死傷罪」なるものが刑法に追加された。


長々と書いたが、ここからが本題。

件の常習的飲酒運転をしていた加害運転手の裁判が何らかの理由で長引いて、結審が刑法改正後の02年だった場合、果たして「危険運転致死罪」を適用できるのかどうか? もちろんこれはできないわけだ。その行為が起きたときの法律が適用され、裁かれるのが当然。「A法は悪法だから、破棄。A法違反によって公判中の裁判もチャラにする」というのなら話はわかるが、公判中に逆に量刑が重くなるのはありえない。ましてや、ある時点では罪でもなんでもなかったことが、「こういう法律が施行されます。過去にさかのぼって罪を断ずることができます」となってしまったら… もはや法治国家ではないだろう。日本国憲法にも「遡及刑罰の禁止」として第39条に明記されている。改憲派もまさかこの部分を改正しようとは思っていない… よな(笑)?

で、ある国でこれに反する「遡及立法」が成立しそうな勢いなんだとか。「遡及立法は違憲だから」という葛藤は見え隠れしているものの、論調としては成立しそうな方向性だ。洋の東西を問わず、新聞の書くことを鵜呑みにしてはいけないが、この遡及立法が通れば、ますますファッショっぽくなってしまうな、と。まぁ、在韓邦人でもない私がヤキモキする必要もないんだけど(笑)、ファッショは嫌い。北朝鮮のファッショの防波堤がファッショになってしまっては、洒落にならん。

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Comments

「正論」が韓国でも売られていることにちょっと驚いたけど、日本の大型書店でも韓国の雑誌は買えますもんね(^^;。

日本の保守系雑誌、韓国紙の日本語サイトでは、「日本の植民地支配を美化したから、攻撃を受けている」というニュアンスだったので、「そんなに凄い寄稿なのか?」と思って正論を買って読んでみたら、「なんだよ、言いたいのはノ政権の左傾化じゃねぇか。親日家というよりも、知日派愛国者じゃん」って思ったんで、報道には凄く違和感を感じましたね。

それと同時に、保守系bloggerが「きわめて冷静な評価」なんて書いているのを読んで、これにもまた違和感が。日本人もこの寄稿を読んで、自国のファシズムへの危機意識を持たないといけないのに。「北朝鮮寄りの発言を慎まなければいけない」という風潮は、憲法9条改正なんかよりもよっぽど「いつかきた道」なんですがね。あの寄稿はまんま日本にも当てはまることを理解できた人が何人いたことやら。

立ち位置によって解釈は違うものであることも、近くだからこそわかることと逆に近いからこそわからないことがあることも、同意です。入った情報の中から取捨選択して一般に流すことをマスコミはやっているわけですから。あとはそれをどう受け止めるかということですな。ただ「わかっちゃいるけど…」というのも人間ですから(笑)。

>日本で同じことをしたら「劇薬」でも、韓国では痛み止め程度ではないかな、と。これは学術的論理ではなく、あくまで経験に基づくものですが。

今回の遡及立法は日本においては明らかに劇薬です。っていうか、法治国家にとっては劇薬です。「過去において適法だった行動が処罰の対象になりうる」という法律ができるような体制であれば、常に怯えながら生活しなければいけないわけでね。韓元名誉教授の寄稿に大きく頷いた次第。これが痛み止め程度なのであれば、法治国家としては未成熟なのかな、と(日本も威張れるほどじゃなけど)…

う~ん、そう考えると、なんか明治期の政治家の考えがわかったような気がします(^^;。彼らと私の共通点は「朝鮮半島は日本の防波堤でしかないが、その防波堤が劇薬を打っていてはたまらん」ってことかな。「痛み止めを飲んでいるだけ」という感覚の現地の人々にとっては迷惑な話ですよね…

Posted by: ric | 2005.04.27 at 10:19

韓昇助氏の論文は韓国のネットでも出回っているので私も読みました。あと、「正論」は実は韓国の大型書店でも売ってます^^;
私の感想としては「この人、心の底からウリ党と左が嫌いなんだな」というところでしょうか。ファシズムそのものへの危惧よりも、彼が「左翼的」と呼ぶ盧武鉉支持派への攻撃が先走っていると私は考えたのです。植民地云々が要旨の骨格ではないことは同意見ですが。
かなりRICさんとは解釈が違うかも(笑)

政策のファシズム化というのは、3月の日記でRICさんが書かれたとおり日本でも危うい部分があるし、韓国でも「おいおい」と思うところがありますが、韓国についてはワタシ的には楽観視してるんですよ。日本で同じことをしたら「劇薬」でも、韓国では痛み止め程度ではないかな、と。これは学術的論理ではなく、あくまで経験に基づくものですが。

>>日本にいると「反日でまとめようとしているんじゃねぇの?」って感じるんですよね。

ここが我々のいちばん大きい違いなのかも(笑)
韓国にいれば感じられることが日本では感じられず、
日本で感じられることが韓国ではピンとこないこともある。
また逆に、内部にいると気づかず外からしか見えないものもあるわけで、ここに朝鮮ウォッチャーの知恵と考察が必要ですな。そうでなくてもドロドロした話題が多くてピリピリしますから(笑)

Posted by: iron_picking | 2005.04.27 at 02:26

>iron_pickingさん
書かれてらっしゃることは凄くよくわかります。朝鮮民族の禍根(?)は全てといっていいほど民族内部での紛争が基ですもんね(^^;。

ただファシズムってのは、国民の心を一にしようとするそういった政策も含まれると思うわけで。それこそ北や旧ソ連、文革時代の中共(あ、今も(^^;?)、蒋介石時代の台湾のように反対派を粛正したり。法治国家であるからして、血の粛正はできないとしても経済の粛正を昔の親日家に適用させようとする姿を見ると、日本にいると「反日でまとめようとしているんじゃねぇの?」って感じるんですよね。

ウリ党だけなら「ハンナラ党の朴代表をおとしめるための法案」と笑えるんですが、ハンナラ党にも推進派がいるみたいで、私を含めて日本人は「韓国ってやっぱり反日でまとまっている?」って。まぁ日本も、民主党には西村慎吾みたいに自民党議員よりも保守なのがいれば、円より子みたいに国会会期中に韓国の自称慰安婦を応援するデモに参加している国賊もいるから、ハンナラ党もピンキリと考えればいいだけですが(笑)。

実は「今の韓国のファシズム化」は例の韓元高麗大名誉教授の寄稿の中にあったんです。あの寄稿の肝は「遡及立法を成立させようとするなんて、バカなことをするんじゃない。ファシズムに走る気か?」ということであって、決して「ロシアに占領されなかったことを喜べ。日本が占領してくれたおかげで韓国は近代化できたんだ」なんてことは話のあやとして触れているだけであって… 今度帰日する際にお貸ししますね>「正論」(^^;。

Posted by: RIC | 2005.04.26 at 00:32

やば・・宿痾って字を間違えました。
慣れないことカッコつけて書くもんじゃないな・・・
出直してきます^^;

Posted by: iron_pickig | 2005.04.26 at 00:23

遡及立法など、私は法律に関しては全くの無知なので「ほうほう」と聞くだけでコメントできませんが・・・。

>ますますファッショっぽくなってしまうな
という部分には「え?」と感じてしまいます。
私は朝鮮民族は世界で一番くらいファシズムが苦手な民族だと思ってましたので。

地域感情、党争分裂、家族主義のエゴ、学閥、族譜、儒者の論争etc..朝鮮民族は過去も現在も「よくぞここまで」というくらいまとまりがなく感じます。日本に併合されたのも党争の末の弱体化が原因の一つですし、朴正熙や全斗煥らの軍事独裁でさえ、統制がとれたファッショ政権ではありませんでした。

「じゃあ反日運動の一体感は何なんだ?」という話になりますが、逆にあれくらいの劇薬がないと一時的であれ、まとまらないように私には見えます。しかも反米にしろ反日にしろ、瞬時に驚異的な爆発を見せても後の尻すぼみもこれまた豪快(笑)。
韓国人はそういう熱しやすくさめやすい自国の国民性を「鍋根性」と自嘲していますが、今回の竹島騒動から起こった反日運動も、ソウルの繁華街では週ごとに急速に収束しています。日本人的には「あれは何だったんだ?」って感じで。

今回の過去の親日財産還収法とやらも、反日ムードで一気にたたみかけて立法にもって行くでしょうが、立法後に本当にキッチリ施行されるかといういうと疑問です。最初は足並みを揃えていた与野党間での調整で対立が深まり、ないがしろに当初の目的を果たさないのではないか、と私は見ています。韓国が国中が団結して国際舞台で結果を伴ったのはW杯4強くらいなもので、まとまりのなさは韓国の宿唖といっても過言でないんじゃないかと。

そう考えると、粛清に次ぐ粛清で儒教的弊害を廃し、その儒教的ベクトルを自分に向け、朝鮮民族の3分の1を全体主義に導いた金日成という男は、いい悪いは別にして朝鮮史上とてつもないことをやってのけたのだなと思ってます。

まあ何にしろ
>洋の東西を問わず、新聞の書くことを鵜呑みにしてはいけない
に全面的に同意ってことで(笑)

Posted by: iron_picking | 2005.04.25 at 22:20

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