キョウの出来事

ご存知の通りグラフィックスが3Dになって、操作感がDQというよりもFFに近くなったわけですが、全体のテイストはまんまDQ。今までプレイヤーが粗いドット絵から想像・妄想していたであろう、鳥山明（「風」をつけたほうがいいのか？　それともまだ鳥山明が描いているの？）の絵によるアニメが見られるという感じ？　FFがCGアニメ映画の世界なら、今作はテレビアニメの世界。この辺は「スタッフ頑張ったな～」という感じですね。ただ「想像力を働かせるところがなくなった」という批判もありだと思います。

操作感が一番変わった点なんですが、FF7以降をプレイしたことがあれば、すぐに慣れると思います。ただ、序盤はフィールドの地図を持っていない上に、マップが広く（＝街から街へが遠い）、またFFシリーズのような操作キャラを遠めで見る視点もない（「主人公付きの移動カメラの視点」と表現すればいいか？）ので、道に迷いやすくなってしまいます。素直に道なりに進んで街で休息・装備品の購入→道から大きく外れないように辺りを探索してダンジョン前のレベルアップ、という王道が吉かな、と。プレイヤーに優しいDQシリーズですから、連続するフィールド上でモンスターが急に強くなることはないので、「この辺はまだ早い」などの判断は容易です。なお、フィールド上に宝箱もあります（シリーズ初？）が、私がプレイした範囲では、また回収できた範囲では、特に高価なものはありませんでした。せいぜい「ちいさなメダル」くらいかな？　もちろん見逃した宝箱に高価な品があったかもしれませんが。なので、やり込み派以外はスルーしても問題ないかな、と。

フィールドと街では昼と夜が区別されますが、今作は何も行動していなくても、時間が過ぎていくという感じですね（前作までは、歩数によって変化）。宿屋には「泊まる」（回復後は早朝になる）に加えて「休憩」（回復後は深夜になる）というコマンドができ、ゴールドはかかりますが「HPが少なくて不安だけど、夜になるまでフィールドを歩こう」ということをせずにすみます。しかしまぁ、「泊まる」と「休憩」なんて、誰が考えたのやら(^^;。

戦闘も雰囲気はシリーズそのままで、脳内想像した画がテレビアニメ化した感じ。これも否定意見は当然あるでしょう。個人的に気に入っているのは、AIが進化していることかな。例によって、攻撃力が一番あるメンバーが一番賢さの低いメンバーなんですが、「自分が一撃で倒せそうなモンスター」を選んで攻撃しているような気がします。一番無駄な動きが多いのが、実は自分でコマンドを入れる主人公だったりするのがちょっとイヤ（笑）。

あと特筆すべきは…　今作も主人公は喋りません。DQはこの点で他のコンピューターRPGと一線を画しているのですが、それが踏襲されています。これはDQのファンとしては喜ばしいところなのでしょうが、今回はちょっと微妙かもしれません。「なぜ主人公は喋らないのが長所なのか？」と問われれば、多くの人は「RPGは文字通り、プレイヤーが主人公の役割を演ずるゲーム。行動の多くをプレイヤーが判断するのに、勝手に変な口調で喋られるとゲンナリする」と答えるのではないでしょうか？　しかし今作は何回か書いているように「テレビアニメの世界」然としているので、逆に主人公が喋ってもいいような気もしました。プレイヤーが想像・妄想できる範囲が極端に狭まっているのだから、主人公のセリフだけプレイヤーの想像力に委ねるのはかえって不自然。そんな風に感じました。

で、「買い」か否かなんですが…　これは意見の分かれるところですね。実売価格が８Ｋ円弱ですから、私と同世代といっても、それなりに痛い金額ですし、そもそも現時点で購入していない人は、DQ礼賛派でもないでしょうし…

テイストというかプレイ感はDQそのものなんだけど、その根幹の部分を支えていた部分が変わってしまったような感じ。DQ4が発売された半年後くらいにDQ開発秘話のようなマンガ書籍が出たことがあるけど、DQ1が出るとき堀井氏と中村氏は、HPという数値でダメージを示すことで、主たる想定プレイヤーの子供達が「痛っ！」と感じてくれるかどうか不安だったというエピソードが載っている。そういうプレイヤーの想像力で補完されるところが少なくなってしまったことに、従来のDQファンは引くかも。

じゃあ常に変革と挑戦を続けているFFファンに受け入れられるかというと、その可能性は低いかな、と。だってテイストはまんまDQだもん。「容量とグラフィックが進化しただけで、やっていることは18年前と同じ」という感想しかないと思う。っていうか、それ以外の感想だったら私は驚く。

だからやっぱりDQファンが買うべきゲームなんだと思う。あるいははじめてDQをプレイする人かな…

これから私もプレイを続けますが、心配なのは「大容量だから、スケールの大きな話にしちゃえ！」的なシナリオ。さしあたっての敵が与えられて、「実はそいつには親玉がいた」「実は実体のない魂に操られていただけで、本当の敵はその魂で、数百年ぶりに実体が復活する予兆だった」程度の話のふくらみならいいけどさ。堀井氏はその辺の匙加減は熟知しているだろうけど。